かわせみ側溝から

志は低空飛行 

やっぱり魔法は使えない   フロリダ・プロジェクト真夏の魔法



フロリダ・プロジェクト真夏の魔法/ショーン・ベイカー監督

 フロリダのディズニーランドのすぐそばの集落に、安モーテルがある。住人は近所で何らかの仕事をしているのではあろうが、日雇い的な仕事の人も住んでいる様子だ。はっきり言って低所得層のたまり場に、時折旅行者が舞い込んでくるようなモーテルということだ(日本ではあんまりこういう形態のホテルが無いのでわかりにくいが、長期滞在型生活ホテルって感じだろうか)。
 そこで暮らしている人々の中に、少なからぬガキの集団がある。そうしてそのガキの集団にあって、特に口が悪くハチャメチャな女の子がいる。仲間を引き連れて、たわいない悪さばかりして回る。注意されると逆切れして、さらにひどいことを言うし、何かものを投げつけてきたりする。叱ったり殴りつけてもいいのかもしれないが、まだ子供だし、大人たちは手を焼いて、まさに手が付けられない。このモーテルに母親と一緒に住んでいるのだが、まったく意に介さないし、そもそもこの子は人から預かった子だという(たぶん嘘)。派手なタトゥーを入れてマリファナばかり吸っていて、典型的なダメ親である。
 当然この親子は、日常的に問題ばかり起こすことになる。お話が進むにつれてだんだんと分かって来るが、ヒッピーのような生活の延長に子供が生まれ、夫からは逃げてきて、しかし住むところも無いし、その日暮らしでものを横流して売ったり、一方的に何かを借りたり、そうして売春をしながら、なんとかその日のお金を工面し、開放的なフロリダの雰囲気の中、自由に暮らしているという訳だ。人との軋轢もあるが、このような感じなので、当然貧困との戦いの中、それでも表面的には楽しくやっていく。売春などの変な仕事は、そのための代償のようなものなのである。
 管理人もこの子供たちや家族には手を焼いていて、しかしだんだんと敵ではないことも分かって来る。彼としても何とか彼女らのことを守ってやりたいし、しかし金銭面などで支援することはできないし、事の方向が上手く行くことを願いながら、周辺の環境の整備をしている訳である。時には文句を言われながら、ひどいこともされながら、同情心もあるので、それはそれとして見守っている、ということなのだろう。
 観ながらなんとなく嫌な予感はしていたわけだが、いくらアメリカとはいえ、こんな人々がそのまま幸せでいられるはずが無いのである。時折影が付きまとい、そうしてそれは覆いがたく隠しがたくなる。
 しかしながら僕は、以前からバカは嫌いなのである。ある意味でずっと彼女らはバカだったわけで、時折少し怪しい仕事はするものの、破綻を招いているのは自分たちである。馬鹿には悲劇しか待っていない。たとえそれが悲しいことだとしても、自分らが招いた責任は、いつかは果たすべきだろう。そういうことを訴えたい映画ではないところが、なんとなく変であるだけである。