
僕は酒飲みのくせに昼酒を飲むのがそんなに好きではない。先日も法事で昼から飲んだのだけど、夕方から夜にかけて記憶がないし具合は悪いし閉口した。ま、飲んでいるときはそれなりにハッピーになれるが、その後の睡眠が中途半端になるというか、酔いざめが気持ち悪いというか。だいたい後ろめたい人生を歩んでいるので、暗くならないと落ち着かないのかもしれない。
酔いざめといえば、渓流釣りの名人とやらが、沢で釣りをしながらちびちびやるのが最高だということを読んだことがある。そうして釣りの方が忙しくなると段々の酔いがさめていって、それが心地よいのだということだった。僕にはその境地がいま一つ分からないのだが、雰囲気としてはそんなもんですかね、とは考えたりする。
もうだいぶ散ってはしまったけれど、花見の季節だといっていいだろう。仕事があるから夜桜ということが多いのだけれど(寒いのは困るので移動したくなるけど)、花見というのは昼に堂々と飲んでいいという愉快な風習で、これはなかなか雰囲気としては良いものである。僕はサクラがものすごく嫌いというのではないが、ソメイヨシノは嫌いで、花なんか観なくても別段どうでもいいのだが、昼にゴザやらブルーシートを広げてワイワイ飲んでいるのは絵としては気分がいいことは確かである。僕の子供のころはまだまだガラや行儀の悪い大人が多くて、花見といえば(または運動会とかが昼酒の名物でした)何処かで喧嘩が始まって大変な喧騒だったのだけど、僕が大人になる頃から日本人も段々と大人しくなってきて、若者は一気飲みだの騒々しい割にはゲロを吐いたら解散する程度のことはあるにせよ、めったに喧嘩を見なくなってしまった。別段それで大変によろしいのだが、たまに「コノヤロウ」とか威勢のいいのが居るな、と見てみると、たいてい爺さんであって、そういう意味ではさみしいと言えなくはない。
花見の季節でいいな、と思うのは、女の人が酒を飲んでいるということは言えるかもしれない。飲み屋さんで酒を飲むのは普通のことだからあんまり意識しないが、昼間っから女の人が酒を飲むというのはまだまだはばかられるところがあるのか、花見の時くらいしか見ることがない。ある時公園の桜の木の下でボーっと遠くを見ていたら、30くらい(僕は女の人の年齢はよく分からないのだけど、とりあえずそれくらいのような気がした)の女の人がギコギコ自転車こいでやってきて、適当な石の上にバスケットを乗っけて、ワンカップの日本酒らしいものをチビチビ飲みながらパンだかチーズだかをつまんで飲んで、そうしてまた自転車こいで帰って行ったのを目撃したことがある。まさに「おぬし、できるのう」という気分になって愉快だった。ああいう昼酒の飲み方なら、もっと奨励されてもよさそうなものだ(ま、自転車は飲酒運転だ、とやかましい世の中だろうけど)。
実を言うとサクラといえば僕は断然葉桜派なのである。緑の眩しい葉桜の下でなら酒を飲むのはさぞ楽しかろうと思うのだが、そう思わない人が多いらしくて誘っても誰も応じてはくれない。繰り返すが昼酒は苦手なので、夜になって居酒屋でいい季節になりましたね、と言いながら飲んでいる方がいいのだから、それはそれでかまいはしないのだけれど…。自粛なんて野暮なことを言う人は何処かに閉じ込めておいて、花見と言いながら集まって、温かい部屋の中で酒を飲みたいものだと思う。何よりその方がめぐりめぐって日本の為になるらしい。堂々と飲めるというのは本当にしあわせで愉快なことである。