かわせみ側溝から

志は低空飛行 

今年(昨年)を振り返る⑭ 娯楽作編


今年(昨年)を振り返る⑭
娯楽作編

 映画は娯楽だ、というのはその通りなんだけど、意外と単純にそのような作りの物は少なかったりする。または、そんなような映画を選んで観てないということもありそうだ。日本で配給される映画のほとんどは、子供向けか、何故かお涙ちょうだい感動巨編だったりする。それは需要に沿っているという言い方もできようが、はっきり言って僕は不満だ。しかしながら、そういう思惑でありながら、ちゃんとやっぱり面白い、敵ながらあっぱれ、という映画もあるわけで、個人的にはそのような屈折した感情はあるものの、曲がりくねって素直に面白いお勧め映画の何本かである。


女帝エンペラー/フォン・シャオガン監督
 迫力もあるし映像も奇麗。しかしながらちょっと残酷ではあるな。剣が簡単に人に刺さる感触が気持ち悪いのかもしれない。でも映画としては素直な娯楽作だ。
主演が一緒ということもあるけど、グリーンディスティニー以降、世界観は変わったなあと思います。日本の時代劇だと、どうしてもこんなウソっぽい(いい意味で壮大という意味)感じにならないもんね。そういう意味では羨ましい世界観なのかもしれない。


ファインディング・ニモアンドリュー・スタントン監督
 僕は父親なのでこのような父親の物語は身につまされるものがある。と、同時になんか違うというような感覚も持った。僕はここまで干渉はしない。しかしひょっとしたらもっと干渉したいのかもしれない。単に臆病なだけなんだろうけど。
映画としては乳離れの物語なので、母性の映画なのではなかろうかとの疑問もある。まあ、子供についてきた親のための、教育娯楽映画というのが本当のところだろう。


エターナル・サンシャインミシェル・ゴンドリー監督
 なるほど、アイディンティティというやつと関係があるらしいな。西洋の人たちはこの問題には関心が高いらしいことは聞いたことがある。僕は日本人だし、子供のころからドラえもん的なSF世界との馴染みがあるので、このような問題には最初から違和感が無い。しかしながらそういう世界観の違いのようなものと、現在過去の記憶のタイムスリップを楽しむ映画のような気もする。漫画的だけど、そのようなわけで馴染んだものの勝ちである。


プリンセスと魔法のキス/ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ監督
 これは子供向けだということなんだが、なんだか大人向けのような気がしないではなかった。王子様が必ずしも憧れの王子様で無いところが素晴らしい。その上に大人社会の汚らしさ。しかしながらそのようなドロドロとかガッカリ感も見事に笑い飛ばして、たいへんに楽しい娯楽作であるとお勧めするのである。でもこれって、本当に子供も楽しめるんだろうか。


アポカリプトメル・ギブソン監督
 宇多丸が褒めていたので見直した映画。一度目は、途中で寝てしまったらしい。寝てしまったのは疲れていたせいで、それに残酷描写が容赦ないので子供に遠慮したのかもしれない。見直してみると、確かに単純に面白い。面白すぎる、ともいえる。手に汗握るとはこのことで、ドキドキが止まらないまま最後まで一気という素晴らしいエンターティメントだ。サド・マゾ・ギブソン万歳である。
 ああ、それと、これこそ諦めてはいけないということと、ほんとうの勇気とは何か、男の自信とは何か、なんかもついでに考えてみよう。


エグザイル/絆/ジョニー・トー監督
 まあ、どれだけこの世界に入れ込めるかで、ぜんぜん違う印象になる映画ではあるだろう。付き合えない人にはどうにもならない愚作だろう。ちょっと前の若いころの僕ならそのように感じただろうことは知っているが、大人になってその辺の事情を割引いて観てみると、なんだかやっぱりカッコいいじゃん、という感じかもしれない。僕は男だけの友情というのは勘弁してくれというタイプの人間だと思うが、娯楽として観る分には、まあいいかである。都合のいいように世界が回っているのだけど、美しさと緊張感が、馬鹿な男の本能をくすぐってしまうのだろう。


300/ザック・スナイダー監督
 珍しくうちの息子たちも飽きずに観ていた。その映像が美しいのと、ゲーム的な展開と、そして肉体美の男たちの迫力ある葛藤が、単純に面白いからだろう。僕がホモだったら、もっと興奮しただろう肉体美とマッチョの世界である。一緒に死ぬのはまっぴらだが、一緒に「オウ、オウ、オウ」と雄叫びをあげられたら気持ちいいかもしれないな、と思ったのだった。


スラムドックミリオネラ/ダニー・ボイル監督
 日本だとどうしても「みのもんた」を連想させられるが、きわめてインド的な、それでいてアメリカ・アクションの映画である。結果はどうなのかというと、素直に面白い。壮絶な話なんだが、別に軽く描かれているわけではないのだが、きわめて後味が悪くないところも偉いと思う。映画はすでにインド人のためにある娯楽という話もある。それでいいとか悪いとかではなく、王道はすでにこの世界観なのかもしれない。